揺れ動く、デジタル戦略 ~デジタル人材の見つけ方~

世界最大手のITベンダーのトップは、口をそろえるかのように、『カレッジ・エデュケーション・システムは機能していない』と指摘する。世界最大手のITベンダーは一方で、他の民間企業や有名大学からサイバー・エンジニアを引き抜いているという報道もある。また、イスラエルのような少数精鋭のサイバー部隊を持つ国では、世界中に散らばる精鋭部隊出身のOBネットワークを生かしながら、サイバー・セキュリティー・ベンチャーを育ててきたようだ。デジタル人材は、日本にいるのだろうか。
     1)デジタル・サービス・オペレーションのデザイン  –社会科学と情報技術の融合–
     2)デジタル・アセットのトレーサビリティ ~データ管理の主導権~
     3) 独自展開を続けるクラウド・ベンダー (製品ベンダー間の互換性が低い)
     4)ダイナミックに変化する、ディベロッパー・エコシステム
     5)デジタル化の停滞による、事業規模の縮小
1)デジタル・サービス・オペレーションのデザイン  –社会科学と情報技術の融合–
最高のサービス体験の構築を抜きにして、持続的なビジネス成長や競争優位性は語れない。ここに、今日のビジネス・コミュニケーション(言ってしまえば、ビジネストランスフォーメーション)の難しさがあるような気がしてならない。『サービス体験のデザイン(サービス・オペレーション)』という社会科学領域のテーマと、『サービス・アーキテクチャー(ディベロッパー・エコシステム)』というデジタル情報系のテーマが混在しているからだ。
東京駅の駅前でレストラン・ビジネスを展開することを想像してみよう。和食、洋食、中華、エスニックなど、事業展開のスコープによって、必要になる人材や備品がことなることを、想像するのは容易だろう。事業展開に当たり必要になる人材(役割/ポジション)として、シェフ、ウェイター、キャッシャーなどがあげられるだろう。また、店内には、たくさんの備品も必要になってくる。たとえば、照明・インテリア、いすやテーブル、店舗スタッフの衣装、キッチン・ガス周り、冷蔵庫・冷凍庫、ドアや床の素材、ウォッシャー、店内設置のガジェットなどだ。 最高のレストラン体験のデザインと、現実世界でデザインの実現をサポートする専門業者は、それぞれ異なる。
次に越境Eコマースのケースを見てみよう。自社で構築したオンライン販売チャネル(ECサイト)へ、海外のお客さんから注文が入り、日本からの商品の発送をするシナリオを考えてみる。ネットでの購買、決済、発送、デリバリーといった一連のバリューチェーンが、顧客体験を左右するといわれている。商品を送る側(荷主)の視点では、『いい商品だから、できるだけ早く、手にとって実感してもらいたい。これからも中長期的なスパンで当社ブランドのファンになってもらえたらいいな。』と願っているはずだ。一方で、国境をまたぐ輸送サービスにおいては、輸送会社、通関業者、税関当局、その他規制当局など、様々なステークホルダーが日本と海外の両方に存在する。取り扱う商材によって、やはり、オペレーション・プロセス(グローバル・トレード・システム)が異なる。日本側税関に提出する輸出申告書類・内容に不備はないか?梱包ガイドラインに沿ってパッケージングしているか?温度管理手順は?日本の省庁から輸出許可を得ているか?現地・税関職員による開封検査への対応は(連絡先)?現地で発生する関税は誰が払うのか?輸送中に箱がつぶれたら、保険がカバーしてくれるのか?このように、取扱商材によって、サービス・プロセスが異なる。新しい技術やコマース・プラットフォームがあふれている今日、『サービス体験のデザイン(サービス・オペレーション)』と『サービス・アーキテクチャー(ディベロッパー・エコシステム)』を、明確に分け、別々に検証すべきではないかと思う。
続いて、海外旅行保険について、考えてみる。海外旅行に行くとき、成田空港などで旅行保険を買ったことがある方も多いことだろう。私の記憶が正しければ、保険料金は、ポリシー・ホルダー(お客さん)が向かう場所(国・都市)や滞在期間によって異なる料金体系であった。『リスクの発生頻度や一回当たりのダメージの大きさ(損害額)』が、場所や期間によって異なるため、価格(保険料金)に反映されていると推測する。また、事故や損害に直面した際に求められるエビデンスの種類や取りやすさは、保険でカバーされる対象商品・内容によって異なる。そして、ポリシー・ホルダーが提出したエビデンスは、保険会社によってその妥当性がジャッジ(損害額の推計)が入ることになるが、保険適用できない(規約に書いていない)ケースや申告内容に不備があった場合には、社内業務プロセスにしたがい、メールや電話などでやりとりも発生することだろう。事故現場に出向き、色々と検証が必要なケースもあるかもしれないし、スマホで撮影した動画やドライブレコーダーの提出を求められることもあるかもしれない。このように、万が一、事故にあってしまったときの保険適応申請プロセスも、取り扱う商材(保険でカバーされる対象商品・内容)によってプロセスが異なる。インシュランス・ビジネスにおいても、取り扱う商材によって、やはり、オペレーション・プロセスが異なる。
以上のように、展開するビジネス・スコープによって、必要な備品や規制、手続き方法や申請手順などがことなり、また、必要となるコマース・プラットフォームも異なってくる。サービス・オペレーティング・カンパニーにとって、これは、『自社が選ぶプラットフォームの種類によって、必要となる人材が異なってくる』ことを意味する。 プラットフォームが異なれば、 キャンディデートへ提示する職務要件(Job Description)も変えていかなければならない。

 

2)デジタル・アセットのトレーサビリティ ~データ管理の主導権~
企業と消費者のタッチポイントは進化を続け、顧客接点も断片化していく中、国際機関や多国籍企業によるグローバルなコラボレーションが加速している。国際連携の進展により、グローバルビジネスの商習慣の定義を、改めて考え直す時期にさしかかっているのかもしれない。消費財市場においては、顧客接点の断片化に伴い、エンドユーザー視点のヴァリュープロポジションの見直しが進んでいる。ユーザ登録、決済方法の選択、配送・受け取りの選択など、集客導線や購買プロセスのデジタル化が進展したことで、消費者属性データを特定企業が独占的に蓄積するようになった。ブランド認知、リードジェネレーション、リテンションなど、各種マーケティング施策もインハウスで展開できるようになったため、老舗代理店(アナログ)は苦しみ、広告代理店(デジタル)は成長が続けている。
【顧客接点の断片化・デジタル化】(Touch Points / Post-sales DtoC Engagement)
■オンライン・ペイメント / ネット決済 / クリプトカレンシー
■SNSプラットフォーム (Video / Music / Chat)
■所有デバイス(通話機器 / ドア鍵 / 警備系アラーム / コンセント/ 電力計 etc)
■シェアリング(車、自転車、eスクーター etc)
■交通機関(イン・フライト Wi-fi / 顔認証による自動決済)
■公共のデータ通信網 (Public Wi-fi 、ブロードバンド衛星通信網 etc)
■商材のデリバリー(ECの配達遅延 / 返品の手間・費用 / 情報商材のダウンロード・コピー)
■デジタル・ペイメント / クリプト・カレンシー
※クリプト・カレンシー事業部を創設しはじめている銀行や決済会社もある。
モノ・カネ・情報・エネルギーなど、私たちの身の回りでは様々なデジタル・アセットが流通している。一方で、そのアセットに正当性をもたせる確固としたエビデンスはあるだろうか。デジタル・アセットのトレーサビリティの欠如が、私たちの日々の暮らしを脅かしている。法人間取引では、新しい情報インフラを活用し、情報のトレーサビリティを高めていこうとする動きがある。
欧州・米国市場においても、ブロックチェーン関連のインダストリー・コンソーシアムの形成が進んでいると聞くし、国内の証券会社や証券取引所では、事業体の垣根を取り払ったパイロット・プロジェクトが進行中のようだ。
また、欧米の保険業界では、保険に特化したブロックチェーン・イニシアティブ『B3i』が進行中だそうで、日本のSBI Group が出資したとの報道もある(May 2019)。『B3i』で採用されている『Corda(R3)』というプラットフォームは、ネットワーク参加者間で互換性もあり、必要となるスキル・セットも、法人企業でもなじみがあるJaveに近いそうだ。
【参考】変革を迫られる産業界
スマートグリッド / パブリック・インフラ事業者 / 衛星通信事業者 / ヘルスケア / 国際海上輸送 / 航空機スペア・パーツ / 生鮮食品のトレーサビリティ / 製薬企業のサプライチェーン / 銀行間送金 / ライドシェア / ホームセキュリティ
■サプライチェーン(国境をまたぐ、モノの動き):
メーカー純正部品、素材、食材、商材、中古家電、中古携帯電話など、(国境をまたぐ、モノの動きにおいて、『原産地~加工~出荷~流通~消費者』の表記に偽りがある。
■国際送金 (国境をまたぐ、おカネの動き):
法人間の資金の送金や外国人による第三国への資金送金など。
■スマートグリッド:
太陽光パネル等を利用して、個人や事業者が発電した電力。電力会社に流す(売る)こともできるようになったが、『誰が、どのくらい売電して、いくら入金されたのか』などの記録が、改ざんされていない保証はあるか?
■身分を証明する書類:
出生証明、運転免許証、パスポート、政府発行の個人識別カードなど、身分を証明する書類がないために、銀行口座の開設 / ローンの申請 / 旅行手配ができない人たちが世界には大勢いる。地球上に存在することが証明されない、そうした人たちは、誘拐や人身売買のターゲットになっている。分散台帳技術を活用し、デジタル・ウォレットのアカウント(アドレス)と、指紋やアイリスなどの個人認証をマッチさせるサービスもあるようだ。
■所有者登録レコードの正当性(プロパティー・タイトルやレジストリー):
ビル、住宅、土地、自動車など、所有者情報の記録に偽りはないだろうか。悪意あるモノによって、データが改ざんされていないだろうか。
 
3)独自展開を続けるクラウド・ベンダー (製品ベンダー間の互換性が低い)
新しい技術とその周辺のエコシステムの形成は、次世代の産業の芽となるきっかけかもしれない。技術とその周辺のエコシステム形成が良く分かる例が、自動車業界だ。自動車業界では、産業の裾野が広く、系列サプライヤーの密度(Tier 1 2 3など)もあり、関連企業に従事するプロフェッショナルの数も、桁違いに多い。新しいコマース・テクノロジー周辺でも、感度の高いディベロッパーが多く生息しており、彼らを中心に新しいエコシステムが形成されはじめている。開発要件 / 約束事(スタンダード) / 開発リソース / 開発環境(SDK)など、ディベロッパーに支持されるディベロッパー・エコシステムはどんどん進化していく。
【参考】新しい技術やコマース・プラットフォーム (DEVELOPER ECOSYSTEM)
■Distributed Ledger / Blockchain / Crypt Currency / Self-sovereign identity
■API Service Integration / Representational State Transfer /
■Data Visualization / Governance / Data Management / Data Catalog / Cross Platforms /
■Hybrid Multi-clouds / Edge Computing / IoT Device / Cyber Security
■Satellite image processing / Satellite image analysis
デジタル・トランスフォーメーション(アナリティクス等)に対する、社会的認知や期待感が増すにつれ、従来のマーケティング的な作業が、オペレーション現場に入り込むようになっている。これまでマーケティング部の守備範囲であった『Behavior Data』と、社内各部署が持っている 『Transaction Data』を統合させて、デジタル・サービスを企画・運営するプロジェクトが、これから益々増えていくことだろう。
『ネットワーク、ゲートウェイ、システム処理(アルゴリズム)、ストレージ』などの専門業者各社には、Amaz0n Web Service / Micros0ft / G00gle Cloudなどのクラウド・ベンダーがあり、彼らはダブル・デジットで毎年成長を続けている(2019年現在)。一方、成熟した技術ではないし、ユースケースもそうんなに多くないのが実状だ。クラウド・ベンダーが複数ある中で、それぞれのクラウド・ベンダーが、それぞれ独自の製品設計で製品展開をしている(異なるブランドの製品との互換性は低い・無い)。ここに、自動車業界やバイク業界の系列と似ている概念がある。部品メーカー各社は、特定の自動車メーカー向けに部品を作っている。たとえば、エンジンやモーター、ブレーキ関連のパーツ、その他様々な動きを制御する装置などがある。しかしながら、極端に言えば、トヨタ系のブレーキ・パーツは、カワサキのバイクには使えない。また、自動車メーカーごとに、認定技術者の種類や育成方法も異なる。
【参考】サービス・オペレーションのデザイン (構成・技術要素)
『エンドユーザーと対面している画面(デバイスやアプリケーション)』については、私たちの多くが、毎日にように使っているので、説明は割愛する。 一方、『アプリケーションの稼動を支える仕組み(構成・技術要素)』に関しては、生活者レベルでの認知は低い(知らなくても生活できる)。通信機能のついた各種エッジ・デバイスから発信された通信データは、様々な社内外の様々なポイントを経由して、デジタルサービスの心臓部分にたどり着く。(i.e. ネットワーク、ゲートウェイ、アルゴリズム(処理)、ストレージ)
ネットワーク、ゲートウェイ、システム処理(アルゴリズム)、ストレージなどの製品は現在、数多くのベンダーにより提供されている。しかしながら、各クラウド・ベンダーがそれぞれのディベロッパー・エコシステムを形成しているのが現状だ。異なるブランド(クラウド・ベンダー)の製品との互換性は低いので、クラウド・ベンダー各社は、自分たちの作った製品群(情報インフラ)をベースとして、デジタル・サービスの展開(企画・立案・導入)をしてもらえるよう、マーケット(お客さん)へアプローチしている。
繰り返しになるが、自動車業界の認定資格がメーカーごとに異なるように、クラウド・ベンダーごとに認定技術者の資格が異なる。それぞれのクラウド・ベンダーが、それぞれ独自の製品設計で製品展開をしているため、異なるブランドの製品との互換性は低い(無い)。

 

4)ダイナミックに変化する、ディベロッパー・エコシステム
最高のサービス体験の構築を抜きにして、持続的なビジネス成長や競争優位性は語れない。ここに、今日のビジネス・コミュニケーション(言ってしまえば、ビジネストランスフォーメーション)の難しさがある。『サービス体験のデザイン(サービス・オペレーション)』という社会科学領域のテーマと、『サービス・アーキテクチャー(ディベロッパー・エコシステム)』というデジタル情報系のテーマが混在しているからだ。
【参考】ブロックチェーン技術の啓蒙・普及活動
ブロックチェーン技術の啓蒙・普及活動も活発になってきている。Ethereum Foundationでは毎年、世界のどこかでカンファレンスを開催しており、今回の開催地は大阪にきまった(“Devcon” /Ethereum Foundation主催 / 2019年10月8日~11日の4日間)。

 

【参考】ブロックチェーン技術の啓蒙・普及活動
ブロックチェーン技術の啓蒙・普及活動も活発になってきている。Ethereum Foundationでは毎年、世界のどこかでカンファレンスを開催しているそうで、今回の開催地は大阪にきまったそうだ (“Devcon” /Ethereum Foundation主催 / 2019年10月8日~11日の4日間)。
また、世界の保険市場では、保険に特化したブロックチェーン・イニシアティブ『B3i』が進行中だそう。2019年5月、日本のSBI Group が出資したとの報道もある。『B3i』で採用されている『Corda(R3)』というプラットフォームは、ネットワーク参加者間で互換性もあり、必要となるスキル・セットも、法人企業でもなじみがあるJaveに近いそうだ。
【参考】ダイナミックに変化する、ディベロッパー・エコシステム (as of SPRING 2019)
●Amazon Web Services、Amazon Managed Blockchainを発表
●Microsoft and Oracle to interconnect Microsoft Azure and Oracle Cloud (June 5)
●米マイクロソフト、Drawbridge社(LinkedIn’s marketing platform)を買収
●米マイクロソフト、JPMorganと提携し、Ethereum系プラットフォームを推進
●GE Aviation developed a supply chain blockchain using Microsoft Azure
●米JP Morgan TSでは、テクニカル・エコシステム・チームを立ち上げた(ディベロッパー・エコシステムの整備)
●米OracleでCloud事業のトップを勤めた方は、Google Cloudへ移籍した(数ヶ月前)
●独SAPのCloudトップも、Google Cloudへ移籍した(数ヶ月前)
●昨年あたりから、SAP / Adobe / Microsoftがコラボをはじめているようだ(Open Data Platform)
●Salesforce、HyperledgerベースのBlockchain Platformを導入
●米IBM、Makreting Cloud事業の切り離しを発表した(ファンドへ売却)
●米IBM、世界最大の海運会社(数社)とGlobal Shipping Platformをローンチ(Blockchainベース)
●米IBM、流通最大手ウォルマートの食品流通プラットフォーム構築を支援(IBM Food Trust)
●米ウォルマート、製薬・薬剤関連のブロックチェーン・コンソーシアム(MediLedger)への参加を表明
●米小売ターゲット、サプライチェーン領域でブロックチェーン・プロジェクトを推進していると発表
●Eコマース大手 Alibaba、知的財産権の管理システムでブロックチェーン技術を活用
●広告代理店・世界最大手のPublicis Groupe、米ADS社のデータ・マーケティング事業(Epsilon)を$4.4Bで買収
●ブリティッシュ・コロンビア大(加)、ブロックチェーン(DLT)など、大学院向けに新講座の設立を発表
●ダブリン・シティ大(愛蘭)、国内初となるブロックチェーン修士課程を設立すると発表
●ペンシルベニア大(Wharton)、フィン・テック関連のオンライン・プログラム(含Blockchain)を開講したと発表

 

5)デジタル化の停滞による、事業規模の縮小
ガートナー ジャパンによれば、『SIerビジネスは10年以内に破壊される』可能性があるそうだ(Apr 2019発表)。アジャイルが前提となるため、現場が回らなくなったり、どのような契約を結ぶべきかが非常に難しくなるためだそう。デジタル化推進の停滞は、事業規模の縮小という未来を暗示する。相対的価値が低下した事業は、ビジネス・ライフサイクルの最終ステージに進まざるを得なくなる。そこは、価格競争や人員削減を伴うコスト削減の世界だ。『助けてくれる外部業者もいない、自社に来てくれるデジタル人材もいない』という厳しい現状がある。
  【参考】揺れ動く、デジタル戦略
  • 『サービス体験のデザイン』と『サービス・アーキテクチャー』というテーマ混在。 
  • 日々の暮らしを脅かす、デジタル・アセットのトレーサビリティ欠如
  • クラウド・ベンダー間の互換性の欠如(製品設計・市場開発・人材育成が、各社独自)
  • ダイナミックに変化する、ディベロッパー・エコシステム

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